寒い。毎日寒い。今年は猛烈に寒い。
札幌では、毎年恒例の雪まつりが開催された。大寒波が調子に乗ってるのにもかかわらず、相変わらずの混みようだった。
2019年のさっぽろ雪まつりは、大寒波のおかげで雪像がひとつも壊されることなく終了したそう。
すべての雪像を閉幕寸前まで見られたのは、観光客にとっては嬉しいことでしょう。
今年の雪像は、いつだか導入されたプロジェクションマッピングにくわえて、AR技術なんちゅうものが導入され、注目を浴びた。
ARは、仮想キャラが現実世界にいるみたいになるやつ。ポケモンGOがやってる、あの技術。
AR技術と雪像をかけあわせて、札幌が推しているキャラ「初音ミク」を召喚するイベント「雪ミクAR」が賑わいを見せていた。

正直、初音ミクさん自体には、さほど興味がなかった。ARと雪像の一体感を見たい。
最新の雪まつりを体感したい。
だから、極寒のなか、雪ミクARの会場をめざした。
大通公園の2丁目が会場になっていて、雪ミクARを見たい群衆たちは、暖房がついているちょっとした小屋に収監される。
「アプリをダウンロードしてくださ~い。10分置きに雪ミクARのライブがはじまります。」と、スタッフの方がアナウンスしてくれる。
壁に貼られたQRコードを読んで、アプリをとる。

アプリがとれた。評価を見ると、どや顔の星5。満点だ。
コメントなしの星5。こういうのは、疑ってかかってしまう。

起動すると、スマホにミクさんが現れる。

「雪ミクARライブに参加するには、コンテンツのダウンロードが必要です。」
このダウンロードがけっこう長い。データ量が多い。
「アプリの準備ができた方、次の回のライブにどうぞ!」と、寒そうな顔したお姉さんが叫んでいる。
呼ばれた段階では、まだアプリの準備はできていない。もう少し待てばダウンロードが終わるんだろうか。これを逃したら、またこの小屋の中で10分待つの…。
いくら暖房がついている小屋とはいえ、北海道の2月。勢いでライブ会場へ出てしまった。
「お困りの方、いらっしゃいませんか~?」と、さっきよりも寒そうな顔のお姉さんが叫ぶ。
ダウンロードさえ終われば大丈夫だろう。余裕の態度でライブ開始を待つ。あと2分。あと1分。ダウンロードが終わらない。
あと40秒。周りがざわざわしだす。どうやらミクさんが雪像の裏からひょっこり顔を出しているようだ。前の人のスマホで確認できた。
あと10秒。ようやくすべてのダウンロードが終わった。間に合った。セーフ。
さて、どんなものか見せてもらおうじゃないの!

ピンチで拡大?縮小?スワイプで回転?
雪ミクARは、スマホの画像と雪像をピッタリ合わせないとライブが楽しめないのだった。
焦って、ピンチしまくる。ぜんぜんミクさんと雪像の照準があわない。床で踊ってたりに、限りなく水平に近い角度になって笑っている。
なにがピンチしてくれだよ、かなりピンチだよ、こんなの。せっかく並んだのに…。
時間をスクロールして巻き戻したい。
雪像とピッタリ合うはずのプレートみたいな画像がのっぺりしたまま立ち上がってくれない。
コンビニのハンバーガーのスライスチーズみたいに力なく水平になっている。
かじかんだ手でスマホを必死にスワイプしていたら、ライブが終わってしまった。
見られたのは空虚な影だけ…。みっくみくにされてしまった。

ラ、ライブってスマホで見るもんじゃないから!!
歌手にスマホ向けるとか、失礼だから!!
じいちゃんに「ガラケーよりスマホの方が簡単だよ」って言うのもうやめようと思った。